症例


以下には当院で確認された症例の学術的な内容を写真を含めて記載しています。 外科手術による摘出臓器を記載しておりますから、気分を害するような内容もあるかもしれませんので、ご注意ください。


当院も開院後一年が過ぎ、手術も80症例を越えました。獣医師一人でやっているわけですから、すべての症例を経験しております。大きな動物病院にいた時には、実際の症例を隅々まで見ることはできなかったわけですが、今はすべての症例に責任をもって対応しているので、多くの経験が蓄積されてきています。


口蓋裂

3か月齢

硬口蓋の皺壁全層にわたり最大で3mm程度の裂孔を認める


9か月齢
里親募集の状態

3か月齢に比べて裂孔が小さくなっている。
食事も正常に摂取ができている。


現状では食事をまともにとれていることから、手術を見合わせることとした。


トリコモナス感染症20160906

トリコモナス感染症です。幼少の動物に多く観察されますが、センターからの引き出し動物でも濃厚な感染が認められました。

粘っとした大調整の下痢を特徴とし、時に血液が混じることがあります。元気や食欲は影響を受けることは少ないです。ペットショップで購入した場合、不衛生なブリーダーからきているような場合には、感染が起きているかもしれません。線虫類の駆虫薬では対処できませんので、虫下し飲ませてもまだ下痢するような場合には、本性を疑う必要があります。

フィラリア症20160520

東京の病院では非常に珍しくなった犬糸状虫症(フィラリア症)。茨城ではまだまだ多く発生しています。

検査キットでの検出

糸状虫の抗原を検査キットで検出。Tのところにバンドが出てくることで、フィラリアの感染の有無を検出する。今回はごく微量の血液で検出がなされた。


全血の鏡検

全血をスライドグラスに一滴以下を付着させてカバーグラスにて観察すると動いているものが観察される。

ヘマトクリット毛細管での濃縮での検出

遠心後の毛細管内で動いているフィラリアの子虫を見ることができる。画質の問題で少し見えづらいです。

超音波での検査結果

子宮筋腫 20160512

年齢が一歳の家庭猫における子宮蓄膿症

食欲不振で来院。外陰部より白色膿汁様物があるとの主訴。飲水はあるがフード食べず。

体温40度。不妊手術未実施のために子宮蓄膿症を疑い、エコー検査で腹腔内に管腔様構造を二つ認める。バイトリルに反応を示し、翌日には若干鳴き声を上げるように少し元気になった。
そのままPyometraとして卵巣子宮摘出術を実施。

大人小指大の肥大卵巣を両側に認める。蓄膿は開放性のためにごくわずかで液状物の貯留はごくわずかであった。摘出後現在経過観察中。


乳頭腫 20160420

背部の皮膚に乳頭状の腫瘤物。レーザーにて切除も可能であるが、おおきくなるようでなければ飼い主様の意向により保存的に観察継続。


卵巣子宮低形成

避妊手術時に通常だと卵巣、子宮が見つかるが本症例ではかなり探したが見つからず、あきらめかけていたところ管腔構造を持つ組織が見つかった。ほとんど機能していないと思われる卵巣とともに、糸のような血管を有しない組織であった。発生率は非常に少ないとのことである。

 

上記にある子宮蓄膿症の猫は体重が2.5キロで左のような大きな子宮であったが、右側の卵巣子宮低形成の猫は体重がその倍の5キロあったにもかかわらず、子宮の大きさはその1/10程度であった。

非常に対照的である。
ちなみに、本猫では妊娠や発情は避妊手術を行わなくてもその兆候はなかったと思われる。


卵胞嚢腫

茨城県動物指導センターより引き出した、メスの成犬。通常の不妊手術中に発見。卵巣が嚢状に、ブドウの房のように発生。度重なるブリーディングを受けていたような子宮の過拡張をうかがわせるような状態であった。

歯石

根尖部に至るまでぎっしりと歯石が付着。当然のように、可動性がある。麻酔下で確認したためにそのまま抜歯を行うといとも簡単に抜け落ちた。


マンソン裂頭条虫症

茨城県動物指導センターより引き出した、メスの猫が下痢をしていたので、検便によりラグビーボール状の虫卵が検出された。駆虫薬を投与したところ糞便中内に排出されてきた扁平上の糸状の虫体。

長さは70cm程度あった。
ドロンタールにて駆虫は容易、その後下痢は収まり、治癒した。

 

マンソン裂頭条虫はケンミジンコの体内で成長、感染性となり、このケンミジンコを直接、あるいは両生類、爬虫類、鳥類などの第二中間宿主を介して終宿主である猫、犬に感染し、その体内で産卵を開始する。
きれいな水やえさ以外のものを食べなければ感染はなく、つまり放浪時代にいろいろなものを口にした結果がこの寄生虫の感染を招いた。

マダニ

本院に来院した、犬や猫から採取されたマダニ。
このマダニにはSFTSというときに人がかかると致死的となるウィルスを有することが知られており、犬や猫の体からマダニを取り除くときにはマダニを潰さないように、細心の注意の下で摘除する必要がある。予防が一番大事ではあるが、とくに草むらの中で立ち止まったり歩いたりした後には体を見てついていないことを確認すると多少の防除になる。


糞線虫

水性下痢をぽたぽたとこぼしていたので、検便によりトリコモナスの大量寄生と糞線虫の虫体を確認。
フラジールにてトリコモナスはすぐに殺滅、しかし糞線虫はなかなか落ちないが、時間の経過とともに、虫体数の減少と活動性の低下、下痢の症状軽減となり、ほぼ治癒。


避妊手術

レントゲンでは四体の胎仔を確認していたが、出生したのは二体のみであった。(12月上旬)

申請時の母乳での飼育が終わった2月下旬に避妊手術を実施。そのときの摘出子宮がこちらのように非常にたるんだ構造を有する子宮が確認された。

なお、不明の2体は死産であったか、産出されずに吸収されたかは不明であった。

東洋眼虫

茨城県動物指導センターより引き出した妊娠♀。年齢推定3-5歳。消化管内の寄生虫が多数いた中で、目の中にも線虫がいることが確認された。

Tamen a proposito, inquam, aberramus. Non igitur potestis voluptate omnia dirigentes aut tueri aut retinere virtutem.